【山下美智代コラム】あなたの人生、片付けます/姑の遺品整理は、迷惑です

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数年前、もっと以前になるだろうか、「ごみ屋敷」という言葉が登場した。最近と言っても数年前からは「汚部屋」という言葉が登場している。字の如く部屋がゴミや物で散乱しているという部屋のことだ。部屋が片付けられない。物、ゴミが捨てられない。そういう人が増えているのだろうか。

そこで登場したのが「あなたの人生、片づけます」と言ってくれる本だ。この本に登場する「片づけ屋の大庭十萬里さん」が汚部屋だけでなくその人の人生まで整理してくれる。

物が捨てられない、片づけられないのにはそれぞれその人なりの理由がある。その物に込められた思いがあったり、思い出があったり、今まで物のない時代に生きてきた人たちにとっては、「もし万が一、もしもの時に、いつ必要になるかもしれない」や「もったいない」という思いがあったりする。

物と共に思いに対する未練があってそれを捨てることができない。物を捨てたからと言って思い出がなくなる訳ではないが、それと一緒に思い出まで消えてしまうような気になる。それは、過去に生きていて、自分の未来に向かって歩を進めていけないということ。現実から目をそらしていることのようでもある。

実は、私も物を捨てられない人の一人だ。思い出の品や、「可愛いから使えるかも」とか「いつか使うかも」「もったいない」と思うとなかなか捨てられない。もったいない世代の生き残りのようだ。

でも今は時代が変わっているようだ。物が溢れている時代。「古いものにしがみつくより新しいものを買う楽しみを味わった方が良い」と言う考え方があるようだ。確かにそれも一理あるかも知れない。物を大切にするという思いはどうしても捨てられないが、不要な物は捨てていかなくては「未練」という思いを心の中に持ち続けてしまう。そんな私もこの本を読んで、断捨離したくなった。

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「あなたの人生、片づけます」と言って、最後の片づけが遺品整理だ。そこで、続いて「姑の遺品整理は、迷惑です」という本がある。人生最後の片づけをしてくれるのは大抵は残された家族だ。実は、少し前に母を亡くした私は、母の遺品整理をすることになり、この二冊の本を読む前から「遺品は残す物ではない」ということを実感していたのだ。

後に残された子供たちの手間を考えると、自分が生きている内に必要のない物は整理していかなくてはならないという思いになり、さらに「断捨離しなくちゃ」という気分になっていた。

何年も前に「遺品を整理します」という業者の宣伝を見たとき、こんな事業が儲かるのだろうかと思った。ところが、今ではこのような業者はきっと大繁盛しているのではないかと思える。 遺品と言うと大切なもの、思い出の品々と思いがちであるが、そんな物ではない。粗大ごみとして出せるならまだ良いが、自分一人ではゴミ収集所に持っていけない物や、公共のゴミ回収に出せないものだってある。

最近はゴミの分別が多く、何ゴミになるのか分別が難しいし、別の物が混じっていると回収してもらえない。ゴミの出し方を間違えると苦情がくるとかで、いろいろ考えるとゴミが出せなくなってしまう人も多いようだ。それにこれが汚部屋の原因にもなってるようだ。

時代の変化をこの本からだけでなく体験して実感する。昔は、と言っても昭和の時代くらいだろうか、遺産は長男や跡継ぎといった誰かに相続されていった。しかし今は、遺産相続でもめるような価値のあるものはともかく相続者がいなくなってきている。都会なら未だしも田舎では、家、田畑、山など管理することも難しく、地価が下がり売ろうにも売れないので、相続したいとも思わないし、残された方が迷惑というほどになっている。以前なら子供に何も残してあげられないのが申し訳ないと思っていたが今は少し違ってきているのかも知れない。

この本の中で、嫁は姑の遺品整理をしながら亡くなった実母と比較する。感情的な性格で物を捨てられず家いっぱいに物をため込み、遺品整理もしないまま突然脳梗塞で亡くなった姑と、人に迷惑をかけないようと自分を律しながら生き、癌だったために死ぬまでに時間の猶予があり身辺を整理して亡くなった母。

「もう、お母さん(姑)いい加減にしてください」と部屋の何処かにいそうな姑の霊に向かって文句を言いながら遺品の整理をしていく中で知らなかった姑の人柄を知っていく。それと比較しながら母との思い出が少なく母が何を考えて生きていたのかを知る術のないことに淋しさを感じる。

人は亡くなった後にその人柄を知るということがあるが、遺品整理はその術となるだろう。私も母の遺品を整理しながら、それを感じる。遺品のなかで捨てるのに迷うような高価な物はないので迷わず捨てていけるが、写真、手紙、手記といったものはどうしても迷ってしまう。

私の母は書くことが好きだったのか、粗品で貰った手帳や孫や私が残した使いかけのノートに日記や俳句を残していた。もう数十年前からのものがあちらこちらから出てきた。読んでいくと今の私と同じ年代だった頃の母、可愛かった母(母は子供のような人だった)に出逢える。母にとって孫や私たちとの思い出は宝物だったのだろう。それらを残しておいても仕方ないが、かと言ってそれを捨ててしまうと母が生きていたことさえ消えてしまうような気持ちになる。

しみじみと人間の一生を考えてしまう。この世に生きていたことも残らない。立派な功績を残し語り継がれるような人や何か作品でも残している人なら別だが。母は私たちの記憶の中に残るが私たちもいつかは消えてしまう。でも、それで良いのかも知れないとも思う。誰の記憶に残らなくても自分が一生懸命に生きた。それだけで十分なのかも知れないと思う。

気を取り直して母の遺品整理をしながら父(もう30年以上も前に亡くなっているが)や母の性格は私に引き継がれたのだろうと思う。そしてまた子供達に引き継がれていく。捨てられないのは私も同じ。子供の保育園からの作品や記録、文集を老後の楽しみにと捨てずに取ってある。

母の遺品整理をしている私の傍らで娘が言う。「お母さん、私たちが迷惑するんやからいらん物はちゃんと捨てといてね」。私は「はい、はい」と言いながら「あんた達も私が死んだ後、お母さんがどんな人やったかしみじみ考える時がくるでしょう。その時私を感じる物を少しくらい残しておいても良いじゃないの」と心の中で思う。でも取り敢えず「断捨離しなくちゃ」。

私には子供に残してあげられるような財産はない。それは子供もよくわかっている。私が子供に残してあげられるのは自分一人でも生きていける力と引き継がれていく資質。それは処分に困らないだろう。

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