【ブックレビュー】萩原遼著·北朝鮮に消えた友と私の物語 / 山下美智代

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2019年を振り返ってみると、まず第一に思いつくことが、元号が『平成』から『令和』に変わり、新しく天皇が即位されたことだろう。しかし、私の中では、それよりも、日本と韓国との関係が戦後最悪と言われるぐらい悪かった事。そして、順調に進むかの様に思われていた韓国・北朝鮮の関係、アメリカ・北朝鮮関係、北朝鮮の非核化問題の悪化。その様な事が、まず思い起こされる。

日本と韓国の関係もそうであるが、日本と北朝鮮の関係は、避けて通れない、見過ごすことの出来ない関係である。私は予てから北朝鮮問題(問題としてしまうのはおかしいかも知れないが)について関心があり、在日朝鮮人、朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)についても関心は持っていたが、深く知る手立ては無く、と言うより近づこうとしなかったというのが、本当かも知れないが、知りたい思いを持ちながら、なおざりにしていた。

ところが、この秋に、たまたま通りかかった古本市で、偶然に『北朝鮮に消えた友と私の物語』(萩原遼:著 文藝春秋 1998年発行)と言う本を見つけ、私はとび付いた。このタイトルからも分かるように、私の知りたかったことが、少しでもわかるのではないかと思ったのだ。
 
『北朝鮮に消えた友と私の物語』は、著者萩原遼氏が、実際体験したことを中心に書かれた、ノンフィクション作品である。高校時代の同級生、朝鮮戦争の戦火を逃れ、済州島から密航してきた友人との出会い。その出合いをきっかけに、朝鮮語を学ぶことになり、同じ済州島から、今度は、武装闘争4.3蜂起時に、少年ゲリラとして、活動していた青年との出合い。

その様な運命的出会いから、著者が『赤旗』の特派員として、平壌で生活し体験したこと、日本から北朝鮮に渡った友人を訪ね目の当たりにしたことなどが書かれている。密航してきた青年の物語を通して、済州島武装蜂起事件、朝鮮戦争での実情を知り、その後の北朝鮮・金日成体制、朝鮮総連、日本共産党との結びつき、北朝鮮に帰還し消えていった人々の様子が、著者の思いと共に伝わってきた。

1972年に赤旗特派員としてピョンヤンに赴いた著者は、そこでは行動の自由が奪われるばかりでなく、妻との会話にも筆談を要するまでになる。日本で日常生活を送っている限り、国家権力というものを強く意識することはあまりないのだが、北朝鮮では常にそれを意識する必要があると言うことである。そうしないと、場合によっては殺されてしまいかねない。

こんな国が1972年の時点でも日本のお隣に存在していたのである。そして多分、今でも当時と同じ様な状況が続いているのだろう。あの国とつきあうには、まずこういった実態を認識する必要がある。本書は、そのためのうってつけの一冊である。私にとって、この本を読んだことは、北朝鮮に近づく第一歩のような気がする。
 
日本は、日本国と言う胎内に、日本人、韓国人、朝鮮人という三つの民族を抱えている。それは拡げたのが日本、韓国、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)である。この三つの民族を収拾し、抱えていくのは、やはり日本の役目だろうと思わざるを得ない。新しい年を迎え、日本がより懐の大きな国となり、三つの国の友好を兄弟国として結ぶ役割を果たしていけることを願ってやまない。
山下美智代
 
著者 萩原/遼 
1937(昭和12)年、高知県生まれ。大阪外国語大学朝鮮語科卒業。「赤旗」記者。平壌特派員。国立公文書館に秘蔵される米軍奪取の北朝鮮文書160万ページを3年がかりで読破し『朝鮮戦争―金日成とマッカーサーの陰謀』(1993年、文芸春秋)を著した。60年代の帰国運動で北に帰った人々の悲劇を描いた『北朝鮮に消えた友と私の物語』で第30回大宅壮一ノンフィクション賞を満票で受賞した。

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