
1957年アメリカ映画「戦慄!プルトニウム人間」
6月10日、日本経済新聞は、米政府が日本が保有するプルトニウムの削減を求めてきたと報じた。プルトニウムは原子力発電所から出る使用済み核燃料の再処理で生じ、核兵器の原料にもなるため、米側は核不拡散の観点から懸念を示している。プルトニウムを再利用する核燃料サイクルを進める日本の原子力政策に大きな影響を与えそうだ。プルトニウムの製造は核兵器への転用を防ぐため原則禁止だが、資源の乏しい日本は再処理して原発で再利用することを日米原子力協定で認められてきた。非核保有国で再処理を認められている国は日本だけだ。現在、全世界のプルトニウム500トンの47トンを日本が持っており、原子爆弾約6千発に相当する。
日本政府は、プルトニウムを燃料として利用する高速増殖炉を開発するために、1983年、福井県に「もんじゅ高速増殖炉」を着工し、これまで1兆円以上を注ぎ込んだ。しかし、事故が相次ぎ、結局2016年12月に廃炉することを決定した。
プルトニウム生産・保有の名分として掲げた高速増殖炉事業が事実上失敗した以上、日本がこれ以上多くプルトニウムを持っている理由も消える。米国は12日の米朝首脳会談で、北朝鮮に完全な非核化を迫る。国際社会は核不拡散へ断固とした姿勢をみせており、日本を特別扱いできないと判断した可能性もある。
米国の要請を受け、日本のプルトニウム管理を担う原子力委員会はプルトニウム保有量を減らし、現在の水準は超えないとの方針を6月中にも決める見通しだ。使用済み核燃料の再処理でプルトニウムを生み出す日本原燃株式会社の再処理工場(青森県六ケ所村)の操業も、先送りする可能性が高い。

現在、日本の使用済み核燃料の量は約1万4000トンだ。今後、毎年約1000トン発生する。日本国内の使用済み核燃料の保管場所は、もうすぐ満杯となる。今後使用済み核燃料の対策を考えなければ、いずれにせよ数年以内に原子力政策は行き詰まる。この使用済み核燃料の問題は、特にそこに含まれるプルトニウムをどうするかが最重要課題である。
近年、「トリウム熔融塩炉」が再び脚光を浴びて来ている理由は、まさにトリウムがこのプルトニウムを消しつつ、電力を生み出す鍵であるためだ。トリウムは、天然の元素で核燃料になる。ウランよりも軽いため、原子炉で燃やしても重いプルトニウムになることはほとんどない。高レベル放射性廃棄物の主因となる長寿命の超ウラン元素の発生量も少ない。ただ、ウランと異なりトリウムだけでは燃えない。そのため着火材が必要だが、それがプルトニウムだ。

トリウムは、古くから原子力燃料として知られていた。昭和30年に作られた『原子力基本法』にも、「核燃料物質とは、ウラン、トリウム等原子核分裂の過程において高エネルギーを放出する物質」とある。アメリカでは1960年代にオークリッジ国立研究所でトリウムを使うための実証炉まで作られた。
しかし、このトリウム原子力技術は具現化しないままで終わってしまった。その最大の理由は、技術的な課題が克服できなかったことに加え、核兵器への転用が困難という、その軍事的背景がその本質的特性であると言える。ウランを軸にした核兵器と原子炉には軍産複合体や原子力産業の莫大な利権が存在し、彼らの抵抗が極めて大きいのも事実だ。
日本では、1980年ごろから古川和男博士の流れがあり、アメリカが一度は諦めたトリウム原発の研究を育ててきており、そのグループ「トリウム熔融塩国際フォーラム」が世界で最も進んだ研究成果と技術を持っているとさえ言われている。

プルトニウムは行き先がない。トリウムも同様で、モナザイト砂(希土類:レアアース)に含まれ、精製する際に放射性のゴミとして生まれる。世界中ですでに15万トンほど溜まっている。今後も毎年1万トン以上、好むと好まざるとにかかわらず発生する。トリウムをプルトニウムとともに燃やす道を与えれば、地上のレアアース採掘時の環境汚染対策を合理的に施すことができるようになる。
これまで使い道のなかったトリウムを燃料にすることができるとなると燃料問題はおよそ片付いてしまう。なぜなら、1トンのトリウムは200トンのウランあるいは350万トンの石炭と同じエネルギーを発生させることができ、年間1万トンのトリウムで100万kwの原子力発電所を1万基稼働できるからだ。
ウラン原子炉は、わずかな最上質の燃料を燃やしただけで大量の「石炭の燃え滓」(核廃棄物)を残す。化石エネルギーはいずれ枯渇し、再生可能エネルギーは柱になり得ない。「トリウム熔融塩炉」の特徴は小型かつ精巧に作ることができ、理論的に、核廃棄物は現在の技術による原子炉の1000分の1しか発生しない。
原発に関する議論の多くは原発推進か脱原発の二者択一だが、今後の対策として最も有望なのは、50年前に「選択しなかった道」へ立ち返ることだ。トリウムを利用する技術の多くはプルトニウムと濃縮ウランを消費するため、貯蔵されている軍事転用可能な物質を大量処分する助けにもなる
次世代原子炉は世界で研究開発中であるが、日本がトリウム熔融塩炉の研究を今始めれば、おそらくすべての知的所有権を獲得することになる。原子力利用のシステムをトリウム系に変更し、ウランの使用を禁止すれば、全世界的に核兵器を無くせるというわけだ。トリウム原子力は人類を新しい紀元へと導いてくれる平和の象徴である。

フォーラムに参加した在韓日本人会「ライラック」メンバー
【天宙医学】「心を一つにする」「心身一体」「神様と直接交流」
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