韓国語
なぜ中国崩壊論に人気が集まるか~嫉妬と焦り
まず中国崩壊論とかに喜んで飛びつくのは、昨今の嫌中感情と経済などで抜き去られてしまったことへの、嫉妬とやっかみが根底にある。
この“中国崩壊論”と表裏一体の人気を成すのが“それでも日本経済最強論”といったイカサマ論の数々である。こういった煽情的なレポートを、そうとわかってエンターテインメント小説として読むのなら差し障りないが、本気に参考にしようというならお勧めしない。
面白おかしな“中国崩壊論”はその大半が的外れ
まず増田氏のコラムにあった、「共産党がわざと無駄遣いして意図的に国民を貧しいままにしている」というのは、いくらなんでも荒唐無稽で、事実と正反対だ。今の政権の最重要課題として前政権から引き継がれているのが、改革開放以降の“富める者から富め”から“所得の再配分への転換”であり、それこそが社会の安定の基礎になると全人代でも議論されている。極めて多くの少数民族を抱え、領土に関しても歴史的いきさつの多い中国では“社会の不安定”に対し極めて敏感であり、貧富の格差の放置が致命傷になると共産党は理解している。
そもそも中国でもシンガポールでもそうだが、民主主義とか言論の自由とかは経済が成長し続けているかぎり不満の矛先がそちらに向かわない、ということで政府は中国人の所得向上を進めてきた。実際に過去30年で最も貧困層が消失したのが中国である事実も、「共産党は大多数の国民をわざと貧しくしている」という指摘と矛盾する。
中国共産党がすぐ倒れるわけもない
ちなみに“共産党崩壊論”に関してだが、実際のハナシ、少なくとも漢族の中国人は共産党の過去20年の経済発展の歩みを高く評価している人がたいへん多い。機能しない民主主義で右往左往してきた日本をはじめとする周辺国をみて、「アジアに民主主義はなじまない。日本を見ていると共産党1党独裁でよかった、と思うくらいだ」と私に(冗談も込めてだが)言ってくる中国人は少なくない。シンガポールをはじめ、1党独裁でもうまくいく国はうまくいき、国民の支持が必ずしも低いわけではないのだ。
またシャドーバンキングの問題で中国経済が崩壊というのも非現実的だ。民間セクターの負債よりもはるかに巨大な国有の銀行が不良債権を大量に抱え続けてきているが、なぜそれより規模がはるかに小さい民間金融の不良債権で経済が崩壊するのか、と私の友人である香港勤務の中国人バンカーは語る。政府は(これで十分とはいわないが)数年前に某地方都市で不良債権問題が明るみになってから、不良債権の拡大を抑える処置をとってきたという(実際数年前から、不動産高騰を抑えるために投機筋の資金が流れないようになっており、実際に住まない2棟目のマンションは買えなくなっていたりする)。
また中国は、アメリカやOECDの多くの諸国にとって最大ないし主要な貿易相手国であり、利害関係が深い中国が百万歩譲って“数年で崩壊”するようなことになるのを、アメリカやヨーロッパは座視しない。
中国にバブルがあるのは事実だが、それに感謝すべき?
私は中国にバブルがないなどとは言っていない。中国にバブル経済があったのは数年前から明らかであり、特に世界金融危機の2008年の後には巨額の財政拡大のみならず、金融緩和を前年の7倍とかの勢いで進めたのが一因だ。また外国人投資家も欧米以外に資金を逃避させ、エマージングマーケットで稼ぐとなると中国に資金を殺到させ、楽観的すぎる経済見通しに基づき資産価格の高騰を招いてきた。
ただ、反面、世界金融危機のショックを吸収するために、中国当局はこのリスクをわかりながらも、巨大な需要拡大政策で世界経済の大きな下支えをしてくれたことを、われわれは評価しなければならない。
当時、中国はまだ世界3位の経済規模だったが、アメリカや日本、ヨーロッパがこけている中で、ほぼ孤軍奮闘で世界経済を牽引してくれた。当時の企業レポートを読めば、どこもかしこも「中国の需要が堅調に推移し……」などの表記が目にできたはずだ。
世界金融危機が続み欧米と日本が不況に沈む中、中国の経済刺激政策が世界経済に果たした役割はたいへん大きく、今や中国がこければ世界の経済にも大きな影響があり、それは日本も例外ではないのだ。同じ理由で私は、日本の経済も韓国の経済も中国の経済も欧米の経済も、全部うまくいくことを願っている。統合された世界経済、結局、自分に影響がくるのだから。
いくら巨大化する中国が面白くなくても、中国崩壊論を期待したり、問題だらけの現実に向き合わず“日本経済最強論”などのうえでアグラをかくのはもってのほかであろう。
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント