「日本は古代史コンプレックスを抱えているため歴史を歪曲し、韓国は近代史コンプレックスがあるため日本文化を無視している」「両国共に東アジアの歴史の中で堂々と独自性を持った文化的主体国家であったことを受け入れてほしい」
「私の文化遺産踏査記 日本編」を出版した、明知大学の兪弘濬(ユ・ホンジュン)教授(美術史)の視点は、民族主義的な偏狭性を超越している。「韓国も日本も認めるべきことは互いに認め合おう」、と促す。日本人は韓半島からの文化伝来を格下げし、韓国人は日本の古代文化を全て韓国がつくったと威張る傾向がある。「両国共に歴史コンプレックスを克服してこそ歴史が正しく見える」、と強調する。
日本の学者たちは、韓国の文化は「韓半島を経由してきた大陸(中国)文化だ」と見下す。それなら、父から貰ったお金は「父を経由してきた会社のお金」なのか?中国の影響を受けたから韓国文化の固有性を否定する論理は成立しない。同じく、日本が韓国から影響を受けた面だけを強調せず、日本自ら成し遂げた文化的な優秀性を認めて評価すべきである。奈良時代を経ながら日本は韓半島の影響を乗り越えて固有の独自的な文化を花咲かせ、更に進んで国際的な感覚まで養った。外国の文明を受け入れて主体的な文化を創り上げたのだ。
著者は、韓半島から渡ってきた「到来人」が日本を治めながら今日の日本を創り上げたという学説は、世界的に認められており、日本の学者の中でも認めている人が多いが、日本に渡って来た韓半島の人々が発展させた文化を、全て韓国文化だと自己中心的に解釈してはならないと主張する。例えば、在米同胞がアメリカで芸術家として成功したら、それを韓国文化の勝利と言えるのか?同じ文化的背景を持った人が、他国で成功したことを高く評価することはあっても、それを韓国文化の勝利だとか、韓民族の成就だとか、大韓民国の格を上げたとか、等々の賛美は自己中心的である。
同様に、同じ民族であっても到来人が日本の地で花咲かせた文化は、韓国の文化ではなく、日本の文化である。そこには日本特有の環境と社会文化が反映されているからである。その反面、日本の学者たちも、弥生時代の農耕文化は中国から「韓半島を経由して入ってきた」と歪曲せず、「韓半島から伝わってきた」事実を認めなければならない。白黒の論理の如く、全てを私のものと主張せず、何が自分のもので何が相手のものなのかを互いに認め合ってこそこのような葛藤はなくなる。
「文化というものは、生命体と同じく動きながら変貌する」湖から流れてきた渓谷の水を湖の水だと言わないのと同じく、韓国の文化が日本に伝播されたとしても、日本の文明は韓国のものであるという主張は間違っている。「各自の独自性を正しく認識して適切に評価する」ことこそ国際社会で共生する為の姿勢である。
「日本の文化から学ぶところも多い」、と著者は朝鮮陶工(陶芸家)の実例を挙げた。韓国では、壬申委乱の時日本に連行された朝鮮の陶工たちを奴隷が虐待されているかのように描くことがあるが、陶工たちはもともと朝鮮では最下層の扱いを受けていた。だが、日本では職人としてきちんと扱われたため、日本の陶磁器が世界的な名品として成長したと指摘する。日本の陶磁器が世界を制覇した背景にはこのような「匠人尊重文化」が存在すると説明する。彼らは、ほとんど匠人として礼遇され、政権の支援の下自分たちの技術力を最大限に引き出して日本の陶磁器文化を発展させた。後孫たちの中には陶芸家の伝統を受け継いだり、帰化して外交官として活躍したケースもある。
九州には、朝鮮陶芸家たちの痕跡が多く、陶磁器文化は文化財や観光商品として良く保存されている。新羅製の皿を包む破紙(リサイクル用の紙)が日本のお寺で発見されたが、「破紙」でさえ数百年間保管してきた日本人の精神に頭が下がる。問題は韓国である。「韓国は昔と同じく陶磁器に対して無関心だ。高麗青磁、朝鮮白磁が素晴らしいと自慢するだけで、生活の中で活かしてない。しかし、朝鮮陶磁器の価値を早くも知っていた日本人はそれを生活の中で活かした。韓国は固有の技術を持っていながらそれを活かし切れず、日本はその固有の技術を丸ごと持って行って偉大な独特の陶磁器文化を創り出した。日本は外国から連れてきた陶芸家であっても、彼らに礼を尽くして待遇し、独自の陶磁器文化を発展させた」
反面、朝鮮は陶芸家たちが連れられて行った後も、陶磁器文化を発展させようと努力しなかった。自国民を愛さない文化を外国人たちが高く評価してくれるはずはない。このような無関心が重なって、現在日本は世界的な陶磁器文化の中心地となって、韓国は自分だけが自慢する文化に止まった。無条件韓国のものが最高だと高ぶらず、韓国自ら自分のものを愛しているかを振りかえて見なければならない。日本は、朝鮮陶芸家たちを侍と同じく待遇して、死後には神社で感謝と敬意を表した。
地理的に近い韓日両国は、歴史的に政治、経済、文化、言語等様々な分野で多くの影響を受けてきた。しかし、互いに対するコンプレックス故に、両国間の文化交流や大衆たちの認識の面においては、世界の他の地域に比べて顕著に不足している。韓国人の中には、日本の古代文化を全て韓国がつくったと見なして、近代史に対するコンプレックスを抱え、日本文化について具体的に学ぼうとしない人が多い。その結果、独島問題など政治的なイッシュ―に対しても、「良く分かっていない」ながら騒いでいる。これからはありのままの事実をそのまま双方が共有すべきだと両国の読者に助言している。
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